0. この投稿の内容
Math Power というハードコア数学イベント内でLTをする機会を頂きました。
そこで私がお話ししたことを、例示した図形のサンプルコードを含めて掲載します。
本当はこういうことを言いたかったという事後補正的な目的もあります…。
スライド | http://www.slideshare.net/ayumunagamatsu/ss-66706777 |
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Sample Code | https://github.com/nama-gatsuo/MathPow/ |
動画 | http://live.nicovideo.jp/watch/lv271784850 |
目次
1. 自己紹介
2. アート活動のテーマ
3. 数学とのつながり
4. 数学的モチーフ
4.1. 対称性
4.2. 写像
4.3. 三角関数
4.4. 正多面体
4.5. フラクタル
5. 作品紹介
1. 自己紹介
ゴリゴリの理数系イベントにも関わらず、文系大学からのアート系大学院進学という門外漢。
対して来場者は、100%理系の方…。
しかし、何をやるにも劣等意識は正直無駄であって、今の時代、インターネットとコンピュータがあるので、あとはモチベーションさえあればほぼなんでも学習し実行することができる。自分も文系卒、数学不得意だったが、表現したい気持ち、純粋なつくる喜びがあったのでここまで数学やプログラミングを学ぶことができ、その上このような貴重な機会を頂くことができた。
2. アート活動のテーマ
アートというフォーマットで作品制作をしていること、そのテーマの説明。
2.1. アルゴリズムにおける美学
アルゴリズムで生成される芸術(とくに音楽、視覚芸術)は、人のとらえ方として、生理的に快い体験であったり美しいと思える体験から遠いのではないか、という問題意識を持っている。人の手が介在しないコンピュータによる生成というだけで新規性を提示できるからだ。反面、人とコンピュータの協働による新しい美学の概念を提示する作品が存在することも事実であり、そうした側面を作品制作を通して例証、具体化していきたい。
2.2. The Bright Side
作品制作を通底するテーマとして「私たちの社会の希望的側面」を意識できる作品づくりを心がけていること。特に、コンピュータおよびインターネットインフラがあることで私たちが選択できる、学習、創作、問題解決の方法は加速度的に増えている。
3. 数学とのつながり
3.1. 数学 – 美
数学は美の原理であり、2つの探求は時として同列視された。古くはプラトン、メジャーなところではダヴィンチ、エッシャーなど。
3.2. コンピュータの誕生以降
20世紀後半コンピュータの登場によって、両者はさらにわかちがたいものになった。
コンピュータを用いれば数学や物理の法則の可視化、つまり秩序の美の可視化ができる。同時にフラクタルといった、あたらしい概念もコンピュータの隆盛と同じくして発見された。
自分は、Processingでアルゴリズムによる図形(いわゆるGenerative Art)を描いたときに数学と美の直接つながりを体感した。
これはコンピュータ「無し」で描くのでは確実に得られない体験だった。
4. 数学的モチーフ
数学、というか有名な幾何の公式を使えば、様々な図形を描くことができる。
ここでは、5つの数学のキーワードをもとに、簡単なアルゴリズムで描くける図形を5例紹介する。
4.1. 対称性
回転対称に並べるという単純な操作をするだけで、無作為な点に秩序が生まれる
Code: https://github.com/nama-gatsuo/MathPow/tree/master/1_symmetry
写像
3次元の図形に対してアフィン変換を施した図形を連続で描く
Code: https://github.com/nama-gatsuo/MathPow/tree/master/2_map
4.3. 三角関数
トーラスを描く公式の変数に適当な値を入れる
Code: https://github.com/nama-gatsuo/MathPow/tree/master/3_trigonometic
4.4. 多面体
正多面体の辺のベクトルを操作して星型の図形を描く
Code: https://github.com/nama-gatsuo/MathPow/tree/master/4_polyhedron
4.5. フラクタル
再帰構文で木を描く。次の階層の枝に進む時の長さと角度をランダムに付与。
Code: https://github.com/nama-gatsuo/MathPow/tree/master/5_fractal
5. 作例
数学的モチーフを使った作品の例。
5.1. View of Polyhedron
5つの正多面体を象徴的に利用したWebベースの作品
作品リンク
作品について
5.2. Soundscape of Portrait
木構造、対数螺旋、曲面のアルゴリズムなどをモチーフとし、音楽による抽象風景を描いた作品。
5.3. Generative Space
ベクトル計算のみで得られた点と線を使ったVR空間。
最後に感想
数学、およびプログラミングは私は誰もが楽しいと感じるものだと思います。文系だから、アート系だからといって敬遠するにはあまりにもったいない領域だと思います。私の興味は、簡単な操作で複雑で美しい図形を描くことですが、応用の範囲は広い、というか実生活に関係しないものはないとさえ言えます。私はまだまだ「にわか」の「ゆるふわ勢」ですが、これからも学んでいきたい領域です。
プレゼンに関しては、ニコ生放送ということもありリアルタイムに誤字の指摘や、「髪きれ!」というグッとくる指摘もらったりなかなか得られない体験をしました。さらに自分のしゃべる順番がまさかの川上量生の直後になるというツライ展開でした。視聴者数も万単位だったようですね…。自分の考えをまとめたり、伝えたりするスキルはまだまだだと思うので、引き続き修行あるのみという感じです。
まわりの登壇者の講演内容がハイエンドすぎたり、自分の発表内容のレベルが聴衆に対してあっていないことへの不安はありましたが、終えてみてお話しできたことを大変ありがたく光栄に思います。
最後に数学についてはかなり認識の浅い私にも貴重な機会をくださった Taketo Sano さんに感謝いたします。