撮影: Tani Shogo
8月末に小樽で the 𐠫𐠂𐠓 オブ 𐠜ウェアー (The Soil of Nowhere) という展示に参加した。北海道とキプロスのアーティストが共同で主宰したもので、完全にアーティスト達主導で企画、運営、実施された。ぼんやりいい思い出として記録するためにもマークダウンに残す。(既に一ヶ月以上経過してしまった。)
文化的な活動をすることへの自分のセンスのなさに関して鬱々と愚痴り倒しているのを見かねた佐野さんが、リハビリを兼ねてということで誘ってくれた。(加齢、私生活での喪失や体調の不調など、典型的な”中年の危機”を経た)
佐野さんは Art Based Research という領域で共同作品をつくること持ちかけてもらった。今でもそのタームについてしっかりと理解していないが、芸術系の大学において修士以上の制作・研究はだいたいこうした活動になるはず。佐野さんの北海道を起点にした実践については書くと長くなりそうなので、本人のメディアや著作を参照して欲しい(たくさんあるはず)。
まず5月にフィールドリサーチをした。道東、オホーツク沿岸を佐野さんカーで何キロも走った。アイヌというよりは北方民族や縄文に類するオホーツク文化についての史跡や資料館が多かった。北海道におけるアイヌ文化に対する眼差しは入り組んだ文脈があり(もしくは入り組んだものとして内面化されており)、そうした政治的配慮が表面化されすぎるせいか、純粋に芸術的な対象として分析しにくい。一方で、形体や意匠における研究、もしくは芸術的なインスピレーションは、オホーツク文化やロシア方面の北方文化(樺太アイヌなども)によるところが大きそうな印象を受けた。この点について作品へと昇華させようと考えた。網走監獄やシゲチャンランドにも行った。シゲチャンランドはヤバいのでぜったいに行ったほうが良い。行ってよかった。佐野さんは自分の作品制作のために実家に行きルーツを辿っていた。佐野さん祖父母にごちそうしていただき、腹一杯になるまで北海道のうまいものをふるまっていただいた。デカい毛蟹、贅沢なずけいくら、ジンギスカンなど。ありがたい。旅費についても佐野さんが取得した財団の助成から賄っていただいた。重ねてありがたい。
東京に持ち帰り制作をし、できた作品とともに8月末また小樽に滞在した。展示した作品については別途作品ページを作った。→ Nipopo Triptych
参加した作家、作品についても個別に叙述したいところだが、それもまた彼・彼女らの発信を追うのが良さそう。 キプロスの作家もEUの助成を取得し、アーティストとして滞在を実現していた。キプロスはトルコとギリシアのあいだの位置し(地政学的という言葉がまさしく使われるべき)、現在にいたるまで2つの勢力の間にはさまれてきた上に、イギリス統治による政策的名残も大きい。とくにDIO DIOのトマスとコンスタンティナはそうした意識から作品とワークショップを企画していた。キプロスからの作家の大半(トマス、コンスタンティナ、アレクシア)は実はフィンランドからキプロスへの移民で、芸術活動についてはヨーロッパや日本など幅広く実践しているとのこと。
出展作品にまつわる議論はどれも興味深かったために、とても素敵な展示になっていたと思う。『「土地・技術・ケア」をテーマとした制作と共生のプラクティス』という、ともすると「それっぽい」テーマが掲げられているが、現状、実践できる範囲において素朴で正直であり、同時に展示について技巧的な作品群であった(進藤さんや岡さんはインスタレーションがうますぎる上に、インストーラーの山田さんのムーブも神がかっていた。)作品を通して作家や他の鑑賞者とおしゃべりするのがとても有意義だし、有意な議論を提供し、人の口を開き筆を走らせることを後押しするというのが作品に背負わされる機能とすると、そうした点では非常に機能的に見えた。
自ら助成金を獲得し、対象(土地や文化、あるいは社会など)に対して実直な表現をおこなうということは簡単なことではなさそうなのは明らかだ。手応えもあるのか曖昧であるが、続けていくにたるなにがしかの応答はあったのではないか。主に北海道の地元の産業や教育との接続も期待される点があったようで、その取りまとめなどは端から見ていてもとても大変そうだった。主催の皆様、お疲れ様でした。
主催が力尽きて札幌に帰ってしまったあと、小樽滞在のみんな(つまり北海道の外から来た人たち)で飲みに行った帰りの写真。
撮影: Tani Shogo