作品について

媒体: スクリーンへのプロジェクション
制作年: 2016年
技術/ソフト: openFrameworks
Source Code: https://github.com/nama-gatsuo/DesignedByNumbers

本作は、第一に統計情報の可視化表現です。描画しているのは平成27年度の自殺者とその理由の内訳の統計です。キー操作によって、パーティクルが分離しラベルが与えられ、これが何のデータなのかが暗示されます。白のパーティクルが、27年度の死亡者の全件数、色付きのパーティクルは自殺による死亡者の全件を表示しています。パーティクルは生成的表現において多用されますが、本作ではその一つ一つに死者という直接的な意味が与えられています。

第二に遺族へのグリーフケア(死別に対する精神的な救済)の意味もあります。鬱病、統合失調症、それに起因する自死という問題においては遺族を含む人々は口をつぐみます。医療技術的に我々は死なない方向に進んでいるにも関わらず、自殺の数は大きくは減っていないし、ともすれば鬱病患者、発達障害の患者は増えています。今生きる私にとっては、心を蝕み死に追いやるこの病理を扱うことの次世代のためにも重要なことではないでしょうか。死亡の統計をグラフやデータでなく、死者ひとりひとり1つの個としての光の粒子に見立て、周囲と共有する装置として本作を制作しました。

これをただの統計情報の可視化ととらえるか(実際はそうです)、GenerativeArtの文脈をみてその審美性を感じるか、もしくは慰霊的側面を読み込むか、感じ方は鑑賞者に委ねられます。数字によるデザインというタイトルは、ジョン前田によるデザインにおける重要な成果に対して若干の皮肉を込めて引用しています。ただの生成的表現、無意味なデータの可視化にとどまるのではなく、生きている者同士が、死者を思い、感情を共有しあえる装置として働くことを願っています。

Data Source

厚生労働省 平成27年中における自殺の状況
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jisatsu/jisatsu_year.html

制作の過程

一覧表として表すのではなく、一つ一つのデータを全件描画し、体感できるようにするため、パーティクルによってボリュームを示すことが着想としてありました。これを実現するために、得られたデータをJSONに構造化してからoFに取り込み、パーティクル一つ一つにデータを付与します。付与の仕方は画像データ内のピクセルに頂点を対応させデータを読み書きする”Vertex Texture Fetch“という手法を用いました。また、毎フレームの座標計算はGPU側で効率化するため、GLSLによって記述しました。
カテゴリ分類の例は数種類試行してみました。

Visualize all data records. Not by the number, but by the volume. #dataviz #datavisualization #openframeworks #generativeart

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#datavisualization demo of social pathology in Japan.

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