作品について
媒体: | PCアプリケーション |
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制作年: | 2017年 |
技術/ソフト: | openFrameworks, Node.js (Express等), MySQL |
Source Code: | https://github.com/nama-gatsuo/Leaves |
”Leaves”は、Generative ArtやData Visualizationの様式を借りて表現された、自殺発生のシミュレーションを主題とするインスタレーション作品です。本作は、人間に古くから見られる自殺という事象についてより思索的な態度になるための私の実践であるとともに鑑賞者との議論の共有のための装置でもあります。作品タイトルは、数量表現でなく一人の人が意識的にこの世界から去る事象にフォーカスすることと、またその死が残された者に何を残すかという問いかけが込められています。
三面スクリーンによって囲われるこのインスタレーションは、あたかも三連祭壇画のようであり、この装置群が宗教的装置もしくは祈りの場でもあるかのように見えます。定期的な間隔で音がなると、画面もダイナミックに変化し、何か意味のある事象が発生したことが読み取れます。この意味を理解しようと努める鑑賞者は、近くに寄り、ディスプレイ装置やその中の文字情報に注目することで、図像が何を意味しているか段々と理解していくことになります。
これは自殺や精神疾患による死の統計予測/シミュレーションです。世界保健機関の報告によると人自殺者数は年間80万人と推定され、40秒間隔で自殺による死が起きています。本作でも40秒に一度、新しいデータが生成され通知されます。データ属性は世界保険期間の2015年の統計に従って無作為抽出で決定されます。発光するパーティクル1つは、属性を持った一人の自殺者の表象であるのです。
台座上には、死者の属性が記録されたタイムラインの他に、コントローラがあり、インターフェスをタップすることで、スクリーン上の球体の表面形状が変化します。これは、GDP、人口増加率、ガンによる死亡率など、社会の有り様を推察するための典型的な指標を表現するグラフであり、自殺の発生の背景を思索するために与えられるガイドであります。本作では自殺とそれ以外の統計に有意な相関を見つけることは不可能ですが、鑑賞者が能動的に参与し、分析的態度になることができます。
三連の面を構成する中央の面には、極座標系の球面と点群が表示されます。左面には馴染み深い正距円筒図法によって最新のデータがプロットされ、文字情報も与えられます。右面では、中央面がすぐに俯瞰視点に戻ってしまうのと対照的に、最新の発生に視点をフォーカスし続けます。新しいデータが発生すると三面は連結して一つの視野を構成し、最新の発生データへと視点移動することで、その出現を極端に強調します。それぞれの画面およびシーケンスの持つ視点は死に対する様々な態度の変容を意味しています。死に対するとき、極端な衝撃を受けるものの、時間がたつと分析的視点、余韻のある慰霊的・感傷的視点といった複数の視点が並行して存在するように思います。
リファレンス
作家は作品を作る際に意識・無意識に関わらず過去や同時代から様々な影響を受けており、結果的に作品に現れます。この作品も例外ではなく、様々な過去の作品や同時代の様式に影響を受けており、その中でも本作にける意識的な方法論の利用や表現様式における継承をまとめるとこのようになっています。
方法論: Data Visualization
Data Visualization は数値データの羅列を、人間の認知を助けるべき視覚表現に置き換えるもので、その歴史は17世紀のデカルトによる座標系の発明、その後の啓蒙主義から多く見られ、コンピュータの発明がこうした表現をより一般化させました。アートに近い領域で提示されるData Visualizationの文脈に、”data-ramatization”と”data-Journalism”があります。本作はこれらの作品群を批評しつつ内面化しています。リサーチについては、こちらにまとめています。
データを感傷的に魅せる”data-dramatization”
特定のメッセージを発するための取材・告発型のアプローチ”data-jornalism”
表現様式やモチーフの選択: Generative Design/Creative Coding
openFrameworks や Node.js 等といったオープンソースのライブラリを用い表現をおこなっています。これらのツールは明確な設計思想があり、歴史の中で培われてきた文脈があります。この点において、本作は既存の技術資産によって規定されている表現であります。パーティクル、ポリゴンメッシュといった具体的モチーフこの文脈での典型表現でもあります。本作のSource CodeはGithub上で公開され、審美的な批判に加え技術的批判にもさらされており、Openな開発と議論が可能になっています。
フォーマット: 三連祭壇画
データ・ソース
- Cause-specific mortality: http://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/estimates/en/
- DataBank by The World Bank: http://databank.worldbank.org/data/home.aspx
- World city database: https://github.com/JoshSmith/worldwide-city-database