次の4月から 岐阜県大垣市の IAMAS ( 情報科学芸術大学院大学 ) という大学院に通うことになりました。修士課程としてデジタルアートを研究・制作します。
院に行くとはいえ、お仕事は継続し、新規の案件もどんどんやりたいと考えています。その点は引き続き何卒よろしくお願い致します…。
ここまでに至る経緯を色々なところで説明する必要がありそうなので、まずブログにしようと思い立ち、本エントリの公開に至ります…。
前説
昨年10月まで、大手インターネット企業で働いておりました。私大文系を卒業して、「ひとまず」社会に出ておきたかったのと、Webがおもしろそうという漠然とした期待から就職しました。
若輩者にも関わらず、ネット広告のシステム改修のPMをさせて頂くなど、本当に貴重な経験させて頂き、日々学びの機会がありました。しかし、システム開発という難易度の高い業務の中で、自分が成功したと自慢できるようなプロジェクトは皆無であり、失敗の連続で自信を無くす毎日でした。それでもプロジェクトにはスケジュールがあり、生産性を上げて取り組まなければならない中、自分のいる場所や進むべき道があっているのか強く疑問に思うようになりました。
周りの先輩同輩は「みんなそんなものだ」と諭してくれましたが、逆に失望は日を追うごとに深くなっていきました。近い業界の他企業を見てみるというのも順当な流れですが、スキルも平凡なモブキャラで再就職しても堂々巡りであることは容易に想像できました。
そうしたときに、まずは原点に立ち戻り、自分の性格適正を考え、モチベーションを常に高く保ち、生産性を発揮できる領域が何かを改めて考えることにしました。
性格
自分の性質は典型的な内向型タイプです。営業職/企画職に求められるような、集団の中で利害関係を調整したり、外交的かつ泥臭く打たれ強く立ち回ることは残念ながらどうやってもうまくできず、無理してこなそうとすると欝のような傾向になってしまいます…。
しかし、作業場に引き篭もって黙々と制作したり調査をすることは苦ではなく、新しい発見をしたり、アイディアが形になったり、成果物の質が上がる過程が快感でありモチベーションでありました。
幼少から振り返ると、家庭の方針的なアレでコンピュータゲームはあまりやらせてもらえなかったものの、かわりにMacの Kid Pix や Coral Draw といったお絵かきソフトを与えられ遊んだのが、原体験としてありしました。
また、運動よりは手遊びが好きで、折り紙、レゴ、ガンプラにはかなり傾倒しました。中学-高校から音楽に出会い、大学までバンドをしたりしていたので、オタクど真ん中とまでは行かないものの、内向的なサブカル男子としての自我が着々と形成されたように思います。
デジタルアート
デジタルアートは広く捉えると、アート表現のなにかしらにコンピュータを介在させたものと言えます。もともと、絵が好きだったり、大学では絵画史を研究したり、会社ではバナーの認知プロセスを考えていたりしていたので、視覚芸術と、テクノロジーによるその発展には大きな興味がありました。
昨今、ライゾマティクス、チームラボ、Party、Dot by dotといったポストWebのテクノロジーアートを指向するようなクリエイティブ制作会社が市場を創り、注目されるようになりました。またVR体験の機運なども相まって、「メディアアート」的なものが市場としても期待されています。上述した企業は、技術力も発想も素晴らしく異次元の天才集団が活躍する遠い世界のようにも感じられますが、実際利用されている技術は、Unity や openFrameworks といった誰もが利用できる比較的ハードルの低い制作環境です。そもそも、こうしたツール以外にも、今やネットを通じた技術領域のオープン化はすさまじく、大企業に属さない個人でも最先端の技術を扱える時代になっています。
自分にもデジタルアートはできるという思いを決定づけたのは「ジェネラティブ・アート―Processingによる実践ガイド 」という書籍です。コンピュータの膨大な計算量と人間の創造性を掛けあわせたときに生成される審美学的な美しさを、コードと文章で説明するという、技術的にも美学的にも深い意義のある論稿のように感じました。
自分の人生を賭けるに納得感を持てるような領域に出会えたことは幸運だったと思います。年齢とか過去とかそういう考慮がどうでもよくなるくらい、可能性を感じますし挑戦したいと心から思います。
計画
まずは時間をとって、学習・制作に向き合い質の高いアウトプットをすることが先決だと考えました。というわけで、集中して制作できる環境の現実的な選択肢としてIAMASへの進学を考えました。おかげさまで無事に合格できたので今年4月から引っ越し、2年間修士課程となります。
また、平行して音楽ライブの演出や、エンタメコンテンツに付随する制作業務を仕事として請け負うことで関連領域の知見や動向を深めていこうと考えています。現状、とてもありがたいことに、Web制作をハブに、デジタルアートをインプリできるような音楽プロジェクトや制作案件のお話を頂き、お仕事としてもワクワクする制作に従事することができています。
引き続き、制作のご相談を受け付けています、というのと、一緒に制作をしてくれるような仲間を恒常的に募集しておりますので、是非よろしくお願いいたします。
方法論としては、VR/AR、プロジェクションマッピング、サウンドビジュアライズといった領域が具体的な表現手段になってはきますが、作品制作を通して、広く今後の芸術体験の可能性や仮説をデモしたり、人間の技術やアートを発展させるモチベーションの根源に迫ったりできればと考えています。
なるべく頭でっかちにならず純粋にワクワクすることを、個人単位、プロジェクト単位でグイグイやっていければ良いなと考えています。
最後に
3月いっぱい、お世話になった人と飲みに行きたいのでお声がけさせてください…。
と言っといて、実家が東京にあるので、そこそこな頻度で帰ってくるとも思います…。