作品について

媒体: HTC Vive上で動作するVRアプリケーション
制作年: 2016年
展示歴:
  • IAMAS WORKS 3.0 (2016, 9/17-18) @ IAMAS OS 3.0
  • 「映像のあたり」(2016, 10/8-9) @ IAMAS
  • Ogaki Mini Maker Faire (2016, 12/3-4) @ SOFTOPIA JAPAN
技術/ソフト: Unity等
Source Code: 未公開

コンセプト

リアルさへのカウンター

2016年はVR元年と呼ばれ話題となりました。しかし市場に登場しているVRは画一的です。海外ではFPS、日本では初音ミクのようなCGアバターを使ったソフトが多く見受けられ、そこには市場が求めた結果としての表現の傾向が見受けられます。このような時代が求めた表現が「様式」として表象した結果が文化史としてありますが、本来自由であるはずのキャンバスに、流行や様式を超えてどんな世界を作れるのかは純粋に追求したい問いであります。

CGを構成するポリゴンとはなんでしょうか。ポリゴンは形体を模しながらも、表面を形作っているにすぎずハリボテです。その表面の質感表現はリアリティを増しており、「不気味の谷を超えた」CGの女子高生Sayaを例証するまでもなく本物らしさの実現は目を見はるものがあります。このようなアリティの表現の追求が隆盛しているならば、そのカウンターとして擬態となる面を削ぎ落とし頂点データだけに削ぎ落とすことも可能で、かつそれが、CGとは何かを再考できるものになりうると考えました。

クリエイティブコーディングの文脈

ワイヤフレームのCGは、フォトリアルな表現をするにはスペックが無かったころの必然としての表現であり、ある種CGの古典表現と言えます。コンピューターの黎明期には、具象的ではない生成的でないパターンが多く研究過程で生まれました。こうした表現は逆に2010年においても、Generative Artという文脈で再び多く生み出されています。この文脈は、ジョン・マエダらに端を発するCreative Codingの系譜にあるProcessingなどのツール群や、フラクタルやカオスなどの計算機科学が生んだ複雑で美しいシミュレーション結果としてのCGと並走して、多くのアートやグラフィティを生みました。

この動きは、商業サイドが生んだCGにおける具象表現とは異にする抽象表現ととらえることができます。Generative Artという文脈を引用して同時代が生んだ超フォトリアルな表現のカウンターとなりうる抽象限をVRで提示したのが本作となります。

制作の過程

世界を歩く、形体の中に入る、動きに形体が反応することを実現するために、支持体としてはHTC Viveを選択しました。(Oculusよりもルームセンサーの個数が多く、歩くことに対する位置トラッキングに強みがあるとされています。)PCはGTX 1080を搭載したゲーミングPCを使用しています。
VJ素材などで制作していた幾何学的なパターンを生成するプログラムを、Unityで動くようにしました。VRアプリへの書き出しは、SteamVRの配布パッケージを利用すればごく簡単に実現できます。このような環境で制作をしていると、現在のテクノロジーがもたらした表現の幅(VR)や支持体の素晴らしさ(ハードウェア性能)を感じずにはいられません。

#generativeart in #virtualreality #htcvive

Ayumu Nagamatsuさん(@ayumu_naga)が投稿した動画 –

#generativeart in #virtualreality with #htcvive

Ayumu Nagamatsuさん(@ayumu_naga)が投稿した動画 –

何回か展示を経る中で、Leap Motionを用いたハンドトラッキングにより、手のジェスチャでインタラクションでできるシーンも追加しました。自身のもレンダリングされることで、世界に対する没入度はあがり、生成的な空間のはずがリアリティを持ったものとして現前します。

rendering my hands in VR w/ #leapmotion .

Ayumu Nagamatsuさん(@ayumu_naga)が投稿した動画 –

レファレンス

John Whitney, “Arabesque”, 1975

リンク: YouTube
コンピュータ黎明期に制作された幾何学的なコンポジションの美しい作品です。当時のマシンスペックではこうした線描表現しかできないという制約が生んだものでもありますが、今見てもその形体やプリミティブな動きは、ここちよいリズムを感じる美しい作品と言えます。こうしたコンピューター黎明期の質感は、Creative Codingの文脈で生存し、クリエーターのインスピレーションの根底となっているように思います。